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犬種標準(スタンダード)とは?犬の種類や特徴、標準の問題点

近年、家族の一員として犬を迎える方が増えています。犬種を選ぶ際、その特徴や性格について調べる方も多いことでしょう。しかし、それぞれの犬種にはあるべき姿としての「標準」が定められており、その標準自体が犬の健康に影響を与える可能性も指摘されています。本記事では犬種標準の基礎知識から現代における課題まで、詳しく解説していきます。
犬種標準(スタンダード)とは?犬の種類や特徴、標準の問題点

目次
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犬種標準(スタンダード)とは?

犬種標準は、その犬の品種がどのような姿であるべきかを説明した基準です。その説明には、体の大きさや形、毛の色や長さ、そして性格まで、犬種ごとにさまざまな特徴が規定されています。

1-1犬種標準が生まれた背景

犬種標準は、約150年前のイギリスで始まりました。もともと犬は狩りや牧羊、番犬など、人間の仕事を手伝うために飼われていました。しかし、産業革命で都市が発展し、人々の暮らしが変わっていくと、犬を家族として可愛がって飼う人が増えていきました。

そんな中、犬の展覧会が開かれるようになり、どんな犬が理想的なのかを決める必要が出てきました。1874年、イギリスで初めて「ケネルクラブ」という犬の団体ができ、各犬種の特徴を細かく記録し始めました。これが今の犬種標準の始まりです。

犬種を記録する動きは世界中に広がり、各国でも同じような団体ができました。それぞれの国で、その土地の犬種の特徴や歴史を記録し、良い血統を守るための基準として使われるようになったのです。このおかげで、今でも私たちは世界中のさまざまな犬種の特徴を知ることができます。

1-2標準が定める要素

まず、その犬の大きさを表す体の高さや体重が数字で示されています。次に、体の形についても細かい決まりがあります。例えば、体全体のバランスや筋肉のつき方、足の長さなどが定められているのです。

頭の部分も重要な特徴の一つです。耳の形や付き方、目の大きさや色、そして鼻の形まで、その犬種らしさを表す要素として決められています。毛の特徴も大切で、毛の質感や長さ、色について細かい基準があります。

さらに、その犬種の性格や行動の特徴も標準の中に含まれています。例えば、活発な性格なのか、おとなしい性格か、警戒心が強いかどうかなども決められているのです。これらの基準があることで、その犬種の特徴がしっかりと守られ、代々受け継がれていくことになります。

代表的な犬種の標準

人気の高い犬種について、その標準を詳しく見ていきましょう。歴史的背景や現代での位置づけにも触れながら解説します。

2-1プードルの標準

プードルは元来、水鳥の猟に使用された実用犬でした。現在見られる特徴的な被毛のカットスタイルも、寒冷な水中での作業を考慮して編み出されたものです。体の一部の毛を残して保温性を確保し、他の部分は短くカットして泳ぎやすくしていました。

スタンダードプードルの体高は45cm超60cm以下で、2cmまでの超過が許容されます。体型は優雅でありながら筋肉質で、頭部から尾まで調和のとれたプロポーションが求められます。特に頭部は長さと幅のバランスが重視され、耳の位置や目の形状まで細かく規定されています。

被毛は巻き毛もしくは縄状毛で、単色であることが望まれます。認められる色は、ブラック、ホワイト、ブラウン、グレー、フォーンなど多岐にわたります。ブラウンは深みのある暗い色調で、均一な色合いが求められます。

2-2柴犬の標準

日本古来の犬種である柴犬は、日本犬保存会による厳格な基準で保護されています。狩猟用の実用犬として飼われ、機能的な体型や勇敢な性格が標準として受け継がれています。

体高は牡39.5cm、牝36.5cm(それぞれ上下1.5cmの許容範囲あり)と定められています。体型は筋肉質でコンパクト、胸は深く、背中は強く、四肢は適度な長さと強靭さを備えていることが求められます。尾は太く、力強く巻き上がることが特徴です。

被毛は二重構造で、外毛は硬く直毛、内毛は柔らかく密生しています。毛色は赤、黒褐色、胡麻、黒胡麻、赤胡麻の5色が認められ、すべての色で「裏白」(腹部や脚の内側が白い)であることが必要です。色の濃淡は明確で、混色のないことが求められます。

2-3チワワの標準

チワワは世界最小の純血種として知られ、古代メキシコ文明に起源を持つとされています。その小ささと愛らしさから、現代では人気の高いコンパニオン犬です。

体重は1kg~3kgと定められ、理想的な体重は1.5kg~2.5kgとされています。特筆すべきは、チワワの標準では体高ではなく体重が重視される点です。体重が1kg未満や3kgを超える個体は失格となります。体型は小型でありながらもコンパクトで、筋肉のバランスが取れていることが求められます。

最も特徴的なのは「アップルヘッド」と呼ばれる頭部の形状です。頭蓋骨は上から見てリンゴのような丸みを帯びており、額は高く突出していることが理想とされます。耳は大きく立ち、やや開いた状態で45度の角度を保つことが求められます。

2-4ドーベルマンの標準

ドーベルマンは19世紀後半にドイツで作出された比較的新しい犬種です。警戒心が強く知的な性質から、警備犬や軍用犬として重用されてきました。

体高はオスが68~72cm、メスが63~68cmと定められています。体型は中型でありながら筋肉質で力強く、優雅さと機能性を兼ね備えていることが求められます。特に胸の深さと幅、背中のラインの直線性が重視されます。

毛色は黒または茶色を基調とし、明確な赤褐色のマーキングを持つことが標準とされています。マーキングは頬、眉の上、喉、前胸部、四肢の内側など、決められた部位に存在することが必要です。

2-5ダックスフンドの標準

ダックスフンドは、ドイツ生まれの狩猟犬です。特にアナグマやウサギの狩りに活躍できるよう、地面に近い低い体と長い胴体を持つように育てられてきました。1888年にドイツで最初のダックスフンド専門のクラブができ、その後の改良が進められています。

大きさによって3つの種類があり、それぞれ胸囲で区別されています。一番大きい標準サイズは、オスが37〜47センチ、メスが35〜45センチです。中間のミニチュアは、オスが32〜37センチ、メスが30〜35センチです。一番小さいカニーンヘンは、オスが27〜32センチ、メスが25〜30センチとなっています。

また、毛の種類でも3つに分かれており、スムース(短毛)、ワイヤー(硬毛)、ロング(長毛)があります。性格は友好的で落ち着きがあり、嗅覚に優れています。攻撃的になりすぎず、怖がりすぎない性質を持っています。毛色は赤や黒、茶色などが基本で、一色のものや二色のもの、まだらのものなど、さまざまな色が認められています。ただし、胸に小さな白い斑点がある以外の白い部分は望ましくないとされています。

2-6ダルメシアンの標準

ダルメシアンは、クロアチアのダルメシア地方が原産の犬種です。白地に黒か茶色の斑点が特徴的で、その模様は2~3センチの大きさで、体全体にまんべんなく分布しているのが理想的です。頭や足、尾の斑点は体よりも小さめになっています。

体格は筋肉質でバランスが良く、かつて馬車の伴走犬として活躍していたため、長距離を走れる体力を持っています。体の大きさは、オスが身長56~61センチ、体重27~32キロ、メスが身長54~59センチ、体重24~29キロです。

性格は明るく友好的で、臆病になったり攻撃的になったりしない安定した性質を持っています。また、運動能力が高く活発な性格のため、家庭犬として飼う場合は十分な運動が必要です。賢く学習能力も高いため、さまざまな目的の訓練に向いているとされています。

2-7ビーグルの標準

ビーグルは、イギリス生まれのハウンド犬種の中で最も小さな狩猟犬です。紀元前のギリシャでウサギ狩りに使われていた犬の子孫とされ、とても長い歴史を持っています。名前の「ビーグル」はフランス語で「小さい」という意味に由来します。

体格は頑丈でコンパクト。体の大きさは33~40センチと、中型犬の中では小さめです。毛色は茶色(レバー色)以外のハウンド犬らしい色なら認められており、尾の先端は白いのが特徴です。

性格は快活で勇敢、そして優れた持久力を持っています。特に嗅覚が鋭く、ウサギなどの獲物の匂いを追跡することを得意としています。また、穏やかで攻撃的になることも臆病になることもありません。こうした素直な性格から、現代では家庭犬としても人気があります。

2-8マルチーズの標準

マルチーズは中央地中海地域が原産の小型犬で、その歴史は古代ギリシャ時代にまでさかのぼります。名前は一般的にマルタ島に由来すると思われがちですが、実は「港」や「隠れ家」を意味する言葉から来ています。古代では港の倉庫でネズミを捕る役割を果たし、後にローマ貴婦人たちの愛玩犬として人気を集めました。

体格は小さく、オスで21~25センチ、メスで20~23センチ、体重は3~4キロと小柄です。被毛は純白で長く、時には床まで届くほどです。淡いアイボリー色は認められますが、オレンジがかった色は望ましくないとされています。

性格は活発で愛情深く、とても賢い犬種です。特に穏やかな性質を持ち、人との暮らしに適していることから、現代でも人気の高いコンパニオンドッグとなっています。

2-9ブルドッグの標準

ブルドッグは、イギリス原産の中型犬です。体格はがっしりとして肉付きがよく、広い肩幅と大きな頭部が特徴的ですが、健康的な筋肉質な体型が理想とされ、肥満は好ましくありません。体の大きさは、体高が35.6~38.1センチ、体重は18~26キロ程度です。

外見的な特徴として、短い足による低い重心、スムースな被毛、独特の形の耳を持ちます。特に顔立ちは特徴的で、極めて短い口先とアンダーバイトが標準とされています。毛色は、ファロー、フォーン、ブリンドル、ホワイト、レッドが認められています。

性格は見た目からは想像できないほど穏やかで友好的です。人懐っこく、のんびりとした性質で、飼い主に対して深い愛情を示します。また、知らない人に対してもフレンドリーに接する社交的な一面を持っています。運動能力はそれほど高くありませんが、家庭犬として適した性格です。

犬種標準の問題点

近年、犬種標準のあり方については、さまざまな観点から見直しの声が上がっています。特に健康面や動物福祉の視点から、重要な問題が指摘されています。

3-1遺伝的健康への影響

純血種の維持にこだわるあまり、近親交配が行われることで遺伝的な多様性が失われ、深刻な健康問題が生じています。例えば、特定の犬種では、遺伝性疾患の発生率が著しく高くなっています。

犬種によっては、特定の遺伝病が高頻度で発生することが報告されています。例えば、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでは、頭蓋骨が小さすぎるために脳が圧迫される症状(シリンゴミエリア)が問題です。

展覧会での入賞犬の子孫が繁殖に多用されることで、特定の血統への依存が進み、遺伝子プールが著しく狭まっています。例えば、ゴールデンレトリバーでは、近年の6世代で遺伝的多様性の90%が失われたとの報告もあります。

3-2外見重視がもたらす健康問題

犬種標準で定められた外見的特徴が、犬の健康に悪影響を及ぼすケースが報告されています。

短頭種(ブラキセファリック犬種)と呼ばれる、パグやブルドッグなどの平らな顔を持つ犬種では、呼吸困難が深刻な問題です。鼻腔が短く気道が狭いため、運動時の呼吸が困難になり、体温調節にも支障をきたすことが知られています。

ジャーマン・シェパードでは、後躯が極端に低い体型が好まれる傾向にありますが、これにより股関節形成不全などの整形外科的問題が増加している状況です。また、ダックスフンドの長い体型は、椎間板ヘルニアのリスクを高めるとされています。

3-3動物の幸せから考える問題点

犬種標準には、動物の幸せという観点から見ると、いくつかの問題があります。例えば、見た目の美しさを重視するあまり、犬の体に負担をかけてしまうことがあるのです。

特に問題とされているのが、耳や尾を切る「断耳」や「断尾」という習慣です。これは昔から一部の犬種で行われてきた手術ですが、見た目のためだけに行うのは犬に余計な痛みを与えることになります。そのため、今では多くの国でこうした手術を制限する法律ができています。

また、極端に長い毛や多すぎるしわなども問題です。例えば、長すぎる毛は絡まりやすく、皮膚の病気の原因になることがあります。顔のしわが深すぎると、しわの間が蒸れて炎症を起こしたり、まぶたが目を傷つけたりすることも少なくありません。

最近では、こうした問題に気づいた獣医師や動物愛護団体から、「見た目の美しさより犬の健康を優先すべき」という意見が増えています。そのため、少しずつですが、犬種標準も犬の健康や快適さを重視する方向に変わってきているのです。

犬種標準の今後

世界各国で犬種標準の見直しが進められ、健康と福祉を重視した新しい基準作りが始まっています。特に欧米諸国では、獣医学的な知見を取り入れた改革に着手しました。国際畜犬連盟(FCI)でも、従来の外見重視の基準から、犬の健康と幸福を第一に考える基準への転換を検討中です。各国のケネルクラブとの協力体制も強化されつつあります。

4-1新しい基準作り

病気の遺伝を防ぐため、世界中で新しい取り組みが始まっています。たとえばイギリスでは、生まれつきの病気があるかを調べる検査が必須です。スウェーデンでは、近い血縁関係の犬同士を掛け合わせることを制限しています。そして、地域ごとに特徴のある犬を育てることを大切にしているのです。オーストラリアではより健康的な犬を育てるため、世界中のさまざまな血統の犬との掛け合わせを進めています。

見た目の特徴にこだわりすぎて、体に負担がかかる体型になってしまった犬種がいます。そのため今は、犬が健康に暮らせる体型を目指しています。例えば、パグやブルドッグは顔が平らすぎて呼吸が苦しいことが多いのです。

そこで、少し鼻を長くする方向で改良を進めています。また、ダックスフントは胴が長く脚が短いため、背骨に負担がかかりやすいです。そのため、体のバランスを見直す動きが広がっています。このように、犬が元気に走り回れて、毎日快適に過ごせる体型づくりが進んでいるのです。

4-2行動と性格重視への転換

現代の都市生活に合う犬の性格や行動が、以前よりも重要視されています。特に、散歩中の他の犬や人との出会いでも落ち着いていられることや、公園やカフェなどの公共の場でも穏やかに過ごせることが大切です。

たとえばラブラドールレトリバーの新しい基準では、もともと重視されている「物を上手に持ってくる能力」に加えて、「人や他の犬と仲良く過ごせる能力」も大切な評価項目となっています。また、家族の一員として暮らすために、子供と優しく遊べることや、お年寄りにも穏やかに接することができるかも重要な要素として考えられています。

都会ならではのストレスにも強い犬が求められています。電車が通る時の大きな音や、人がたくさん行き交う場所、エレベーターの乗り降りなど、都会での生活に慣れていることも新しい基準の一つです。

ドイツでは、都会での生活に向いているかどうかをテストする取り組みがあり、その結果を次の世代の犬を育てる時の参考にしています。マンションでの生活や、飼い主が仕事で家を空ける時間が長くなることも多い現代では、そういった環境でもストレスをためすぎない犬を育てることが大切です。このように、さまざまな面から犬の性格を総合的に評価する新しい仕組みづくりが広がっています。

犬の知識をより深めたい方へ

犬のことをもっと深く理解したい、正しい知識を身につけたいと考えている方は多いのではないでしょうか。そんな方にお勧めなのが、ドッグトレーニングアドバイザーの資格となります。犬の基本的な生態から、しつけ方、健康管理まで幅広い知識を学べます。特に、アイコンタクトやハンドサイン、基本的な指示の教え方など、実践的なトレーニング手法を体系的に習得できることが大きな特徴です。

また、犬種ごとの特性や標準についても詳しく理解を深められるため、それぞれの犬種に合った適切な接し方や飼育方法をマスターすることが可能になります。さらに、室内トイレのしつけや散歩のマナー、来客時の対応など、日常生活で役立つ実践的なスキルも身につきます。

資格取得後は、一般家庭での飼育に関するアドバイスや、カルチャースクールでの講師活動など、さまざまな場面で活躍の機会があるでしょう。近年、ペットの飼育数は増加傾向にあり、専門知識を持った人材への需要も高まっています。

まとめ

まとめとして、犬種標準は各犬種の特徴を理解し、適切な飼育を行うための指針です。しかし、標準に定められた特徴が時として犬の健康や幸福を損なう可能性があることも認識しておく必要があるでしょう。これからの犬種標準は、外見的な特徴よりも健康と福祉を重視する方向へと進化していくことが望まれます。標準を参考にしながらも、それぞれの犬の個性と健康を第一に考えた飼育を心がけていきましょう。

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