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犬の分離不安の症状とは?原因やトレーニング法・治し方をくわしく解説

「留守番中に家具を噛んでしまう」「外出すると絶え間なく吠え続ける」「トイレのしつけができているのに、留守番中だけ失敗してしまう」――。こんな愛犬の行動に頭を悩ませていませんか?実は、これらの問題行動の裏には「分離不安」という心の問題が隠れているかもしれません。本記事では、分離不安の症状や原因を理解し、効果的な予防法や改善方法について、具体的に解説していきます。
犬の分離不安の症状とは?原因やトレーニング法・治し方をくわしく解説

目次
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分離不安とは何か?

分離不安は、多くの犬が経験する可能性のある心理的な問題です。飼い主から離れることで強い不安やストレスを感じ、それがさまざまな問題行動となって表れる状態を指します。獣医師の調査によると、全ての犬の約14%が何らかの分離不安の症状を示すとされています。

1-1分離不安と分離不安症の違い

一般的な分離不安と、治療が必要な分離不安症には明確な違いがあります。犬が飼い主の外出時に少し不安そうな様子を見せるのは、多くの犬にとって自然な反応です。一方、分離不安症の場合は、その不安が極度に強く、破壊行動や過度の鳴き声など、日常生活に支障をきたすほどの問題行動として現れます。

1-2なぜ今、分離不安が注目されているのか

コロナ禍での在宅勤務の増加により、常に飼い主と一緒に過ごす時間が増えた犬たちの中で、分離不安の症状が顕著になるケースが増えています。また、在宅時間が長くなったことで、これまで気付かなかった愛犬の不安な行動に目が向けられるようになったことも、分離不安への関心が高まっている理由の一つです。

1-3分離不安に関する誤解と事実

愛犬の問題行動を「しつけが足りない」「わがまま」と誤解している飼い主も少なくありません。しかし、分離不安は犬の性質として自然な反応であり、適切な理解と対応が必要な状態です。叱ることで症状が改善するわけではなく、むしろ犬の不安をさらに強めてしまう可能性があります。

分離不安の症状を理解しよう

分離不安の症状は、留守番中と飼い主と一緒にいるときで大きく異なる特徴を見せます。症状を正確に把握することは、効果的な対策を講じる上で非常に重要です。まずは、あなたの愛犬がどのような行動を示しているのか、じっくりと観察してみましょう。

2-1留守番中に見られる症状

留守番中の症状は、飼い主が直接目にすることは少ないものの、帰宅時の様子や近隣からの指摘で気付くことが多いものです。最も多く見られるのが、絶え間ない鳴き声や吠え声です。これは不安な気持ちを表現しているサインであり、数時間にわたって続くこともあります。
また、ドアや窓枠を引っかいたり、家具を噛んだりする破壊行動も特徴的です。普段は完璧にできているトイレのしつけが通用しなくなり、部屋の中で排泄してしまうケースも珍しくありません。なかには、強いストレスから自分の体を過剰に舐めたり、尾を追いかけ続けたりする自傷行為に及ぶ場合もあります。

2-2飼い主と一緒にいるときの症状

飼い主がいる時間帯でも、分離不安を抱える犬には特徴的な行動が見られます。最も顕著なのが、常に飼い主の後をついて回る過度の追従行動です。飼い主がトイレや浴室に行くときも離れようとせず、まるで影のように付いてきます。
また、飼い主が外出の準備を始めると、落ち着きがなくなったり、震えたり、過剰に甘えたりする様子が見られます。このような行動は、別離への不安が強まっていることを示すサインといえます。

2-3見逃しやすい初期症状のサイン

分離不安の初期段階では、必ずしも明確な問題行動として現れるとは限りません。例えば、いつもより水を飲む量が増える、食欲が不安定になる、普段より落ち着きがない、寝つきが悪くなるなど、些細な変化として現れることがあります。
また、外出準備をする飼い主の様子を注視したり、普段よりも頻繁におもちゃを持ってくるなどの行動も、不安の表れかもしれません。
こうした初期症状を見逃さないためには、日頃から愛犬の様子をよく観察し、些細な変化にも気を配ることが大切です。また、留守番中の様子を把握するために、ペットカメラを設置するのも有効な方法の一つです。早期発見・早期対応が、分離不安の改善に大きく影響します。

なぜ犬は分離不安になるの?

分離不安は、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生する問題です。単純に「甘やかしすぎ」や「しつけが不十分」といった理由だけではなく、犬の本能的な社会性や生活環境の変化なども大きく関係しています。犬の行動の背景にある理由を理解することで、より効果的な対策を講じることができます。

3-1主な原因と背景

分離不安の発生には、いくつかの重要な背景要因があります。まず一つ目は、急激な環境変化です。引っ越しや家族構成の変化、同居していた他のペットとの死別など、犬にとって大きなストレスとなる出来事がきっかけとなることがあります。
二つ目は、過去のトラウマ体験です。幼少期に十分な社会化がなされなかったり、保護犬の場合は過去の放棄体験などが、不安を引き起こす原因となることがあります。三つ目は、飼い主との過度な愛着関係の形成です。常に一緒にいることで、一人で過ごす時間に対する耐性が失われてしまうのです。

3-2犬種や年齢による特徴と傾向

分離不安の発症しやすさには、犬種による違いも見られます。一般的に、人との関わりを好む傾向が強い犬種、例えばトイプードルやチワワなどの小型犬や、ボーダーコリーなどの賢く敏感な犬種で多く見られる傾向があります。
また、年齢による影響も無視できません。子犬期から適切な一人時間を経験していない場合や、高齢になって認知機能が低下してきた場合にも、分離不安が発症しやすくなります。

3-3飼い主の生活習慣が与える影響

飼い主の生活スタイルも、分離不安の発症に大きく関わっています。例えば、長時間の在宅勤務から突然オフィス勤務に変更になった場合や、休暇明けに急に留守番時間が増えた場合などは、犬にとって大きなストレスとなります。
また、飼い主が愛情表現として常に犬の要求に応えてしまう、外出時に過度に心配する様子を見せるなど、飼い主自身の行動パターンが、犬の不安を助長してしまうこともあるのです。
こうしたさまざまな要因を理解し、自分の愛犬の場合はどの要因が強く影響しているのかを見極めることが、効果的な対策を立てる第一歩となります。次のセクションでは、こうした理解に基づいた具体的な予防法について説明していきます。

分離不安の予防法

分離不安は、発症してからの対処よりも、予防的な取り組みの方がはるかに効果的です。特に子犬のうちから適切な対策を講じることで、将来的な問題の発生を大きく減らすことができます。ここでは、具体的な予防法について説明していきます。

4-1子犬の時期からできる予防策

子犬期は、さまざまな経験を通じて世界を学習する重要な時期です。この時期に適切な「一人時間」の過ごし方を覚えさせることが、分離不安の予防につながります。まずは短い時間、例えば数分間から始めて、徐々に留守番の時間を延ばしていきます。
この際、重要なのは決して無理強いをせず、犬が安心して過ごせる環境を整えることです。おもちゃや安全な場所を用意し、留守番が「怖い経験」ではなく「平和な時間」として認識されるように工夫します。

4-2日常生活での注意点と心がけ

日々の生活の中で、いくつかの重要なポイントに気を配ることで、分離不安を予防することができます。例えば、外出や帰宅時に大げさな別れや挨拶をすることは避けましょう。これにより、飼い主の出入りが特別なイベントではなく、日常的な出来事として受け止められるようになります。また、常に犬の要求に即座に応えるのではなく、適度な距離感を保つことも大切です。愛情表現は大切ですが、過度な依存関係を作らないよう注意が必要です。

4-3適切な社会化の重要性

社会化とは、さまざまな環境や状況に慣れさせることで、犬が柔軟に対応できるようになるプロセスです。特に生後3週間から3ヶ月齢までの期間は、社会化の重要な時期とされています。
この時期に、他の犬や人との触れ合い、さまざまな環境での経験を積ませることで、新しい状況にも適応できる自信を育てることができます。また、ドッグランやしつけ教室など、飼い主以外の存在も楽しいものだと学ぶ機会を設けることも効果的です。
ただし、これらの予防的な取り組みも、一つ一つの犬の性格や環境に合わせて調整する必要があります。例えば、元々神経質な性格の犬の場合は、より慎重にステップを踏んでいく必要があるでしょう。また、保護犬など、過去にトラウマ的な経験がある場合は、専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。

分離不安を改善するトレーニング法

分離不安の症状がすでに現れている場合でも、適切なトレーニングによって改善することは可能です。ただし、これは一朝一夕にはいかず、愛犬のペースに合わせた段階的なアプローチが必要になります。焦らず、着実に進めていくことが成功への近道となります。

5-1基本的なトレーニングの進め方

トレーニングで最も重要なのは、犬が安心して一人でいられる時間を少しずつ築いていくことです。まず始めに、外出のサインとなる行動(鍵を持つ、コートを着るなど)に対する不安反応を和らげる必要があります。これらの動作を何度も繰り返し、実際には外出しないという練習を行います。この過程で、外出の準備が必ずしも「飼い主との別れ」を意味するものではないことを学習させていきます。
このトレーニングでは、愛犬が落ち着いている時に行うことが重要です。興奮状態や不安な様子が見られる場合は、一旦中断して落ち着くのを待ちます。また、成功体験を積み重ねることが大切なので、最初は数秒から始めて、確実にクリアできる時間から始めましょう。

5-2留守番に少しずつ慣らしていく

留守番の練習は、必ず段階を追って行います。最初の段階では、同じ部屋の中で少し距離を置く程度から始めます。例えば、犬から数メートル離れた場所で本を読んだり、パソコン作業をしたりするところから開始します。この時、犬が落ち着いて過ごせていれば、静かに褒めてあげましょう。
次の段階では、別の部屋に短時間移動する練習を行います。この際、最初は10秒程度の極めて短い時間から始めます。
徐々に時間を延ばしていき、犬が不安を示さない範囲で練習を重ねていきます。重要なのは、一度に時間を大きく延ばそうとしないことです。

5-3外出・帰宅時の正しい対応方法

外出・帰宅時の対応も、トレーニングの重要な要素です。外出する際は、大げさな別れの挨拶をせず、さりげなく出かけることが推奨されます。また、帰宅時も、すぐに愛犬に注目を向けるのではなく、まずは落ち着いた様子で普段の動作(上着を脱ぐ、手を洗うなど)を行います。犬が落ち着いた状態になってから、穏やかに挨拶をするようにしましょう。
このような対応により、外出と帰宅が特別なイベントではなく、日常的な出来事として受け止められるようになっていきます。また、留守番中に問題行動があった場合でも、決して叱らないことが重要です。叱ることで不安が強まり、症状が悪化する可能性があるためです。

分離不安を改善する環境づくり

分離不安の改善には、トレーニングだけでなく、愛犬が安心して過ごせる環境を整えることも重要です。適切な環境は、犬のストレスを軽減し、トレーニングの効果を高める上で大きな役割を果たします。ここでは、具体的な環境づくりのポイントについて説明していきます。

6-1安心できる留守番スペースの作り方

留守番用のスペースは、愛犬にとって安全で快適な場所でなければなりません。まず、部屋の温度や湿度に注意を払い、季節に応じて適切な環境を保ちます。夏場は25度前後、冬場は20度前後を目安に管理し、直射日光が当たる場所は避けましょう。また、窓の外が見える場所は、外の刺激で不安になりやすいため、カーテンやブラインドで目隠しをすることをお勧めします。
スペースの広さも重要です。クレートを使用する場合は、犬が立ち上がって回れる程度の大きさが適切です。しかし、広すぎる空間も不安を助長する可能性があるため、部屋全体を開放するよりも、一定の区画を設けることをお勧めします。また、お気に入りのベッドやブランケットなど、普段から使い慣れているアイテムを置くことで、より安心感を与えることができます。

6-2おすすめの知育玩具と過ごし方

留守番中の時間を有意義に過ごすための工夫も重要です。特に知育玩具は、犬の知的好奇心を刺激し、退屈を紛らわすのに効果的です。例えば、中にフードを入れて転がすタイプのおもちゃや、パズル型の給餌器などが人気です。
ただし、これらは必ず事前に飼い主と一緒に使い方を学習させ、安全に遊べることを確認してから留守番時に使用するようにしましょう。
また、おもちゃは一度に全て出すのではなく、数種類をローテーションで使用することをお勧めします。これにより、新鮮さを保ち、より長時間興味を持続させることができます。特に留守番の最初の30分間は不安が強くなりやすい時間帯なので、この時間帯に集中して遊べる玩具を用意することが効果的です。

6-3ストレス軽減のための音や光の工夫

環境音や照明も、愛犬のストレス軽減に重要な役割を果たします。完全な静寂は逆に不安を強めることがあるため、普段から聞き慣れた音楽やテレビの音を流すことをお勧めします。特にクラシック音楽やスローテンポの音楽は、リラックス効果があるとされています。ただし、音量は控えめにし、突然の大きな音が入らないよう注意が必要です。
照明については、完全な暗闇を避け、程よい明るさを保つことが大切です。特に夜間や曇りの日は、間接照明を使用するなどの工夫が効果的です。また、外の音が気になる場合は、ホワイトノイズを流すことで、外部の騒音をマスキングする効果も期待できます。
これらの環境づくりは、一度に全てを変更するのではなく、少しずつ試してみながら、愛犬に合った最適な環境を見つけていくことが重要です。また、定期的に環境を見直し、季節の変化や愛犬の年齢に応じて適宜調整していく必要があります。

専門家による治療とサポート

分離不安の改善には、家庭での取り組みだけでなく、専門家のサポートを受けることも重要な選択肢となります。特に症状が深刻な場合や、自己流の対策では改善が見られない場合は、獣医師や専門のトレーナーに相談することをお勧めします。

7-1いつ獣医師に相談すべきか

獣医師への相談が必要なタイミングは、愛犬の症状の程度によって異なります。例えば、激しい自傷行動が見られる場合や、食欲不振が続く場合、極度の破壊行動がある場合などは、すぐに受診を検討する必要があります。また、突然分離不安の症状が現れた場合は、他の身体的な病気が隠れている可能性もあるため、健康診断を受けることをお勧めします。
特に見逃してはいけないサインとしては、過度の流涎(よだれ)、震え、パニック状態での自傷行動などがあります。これらの症状は、ただの甘えや躾の問題ではなく、深刻な精神的ストレスの表れである可能性が高いため、専門家による適切な評価と治療が必要です。

7-2治療オプションと薬物療法の実際

分離不安の治療には、行動療法を主体としながら、必要に応じて薬物療法を組み合わせるアプローチが一般的です。薬物療法では、抗不安薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などが処方されることがありますが、これらは必ず獣医師の指示のもとで使用する必要があります。
薬物療法の目的は、愛犬の過度な不安を和らげ、行動療法をより効果的に進められるようにすることです。ただし、薬物療法は万能ではなく、また副作用の可能性もあるため、慎重な経過観察が必要です。薬の種類や投与量は、愛犬の症状や体調に応じて調整されていきます。

7-3行動療法士やトレーナーの活用方法

専門のトレーナーや行動療法士は、分離不安に対する体系的なトレーニングプログラムを提供してくれます。これらの専門家は、愛犬の個性や生活環境を考慮した上で、具体的なトレーニング方法をアドバイスしてくれます。また、飼い主自身のトレーニング技術の向上にも役立ちます。
トレーナーを選ぶ際は、分離不安の治療経験が豊富で、ポジティブな強化法を用いるトレーナーを選ぶことが重要です。叱責や罰を主体とした古い手法は、かえって症状を悪化させる可能性があります。また、定期的なフォローアップを行ってくれるトレーナーを選ぶことで、長期的な改善を期待することができます。
専門家によるサポートは、決して「自分の努力が足りない」ということではありません。むしろ、愛犬のために最善の選択をしているという前向きな判断として捉えることが大切です。専門家の知識と経験を活用することで、より効果的で安全な改善を目指すことができるのです。

まとめ

分離不安に悩む愛犬との生活は、時に心が折れそうになることもあるかもしれません。しかし、あなたの愛情と理解ある対応は、必ず愛犬の心に届き、よりよい関係性を築く礎となるはずです。一日一日の小さな進歩を大切にしながら、愛犬との幸せな時間を積み重ねていってください。専門家のサポートを受けることも含め、あなたに合った方法を見つけ、実践していくことで、きっと望ましい変化が訪れることでしょう。
本記事が、分離不安でお悩みの飼い主の一助となれば幸いです。愛犬との生活に不安や心配がありましたら、ぜひ信頼できる獣医師やトレーナーに相談してみてください。

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