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犬のヒゲは切ってもいい?必要性や正しいカットの方法を解説

愛犬のふさふさとしたヒゲを見て、「切った方がすっきりするかな」と考えたことはありませんか?でも、ヒゲを切ってしまって大丈夫なのか不安に思う飼い主さんも多いでしょう。実は、犬のヒゲには重要な役割があるのです。本記事では犬のヒゲの役割や、カットの必要性、適切な手入れの方法について解説していきます。犬のヒゲのカットについて、くわしく知りたい方は、ぜひ最後までご一読ください。
犬のヒゲは切ってもいい?必要性や正しいカットの方法を解説

目次
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犬のヒゲの役割とは

犬のかわいらしい表情に欠かせないヒゲですが、単なる装飾ではありません。実は、犬の生活にとって重要な役割を果たしています。

1-1感覚器官としての機能

犬のヒゲは、一般的な被毛とは異なる特殊な構造を持っています。ヒゲの根元には神経と血管が集中しており、非常に敏感な感覚器官として機能しています。
犬は人間と比べて視力があまり良くありません。そのため、ヒゲを使って周囲の状況を把握することがあります。ヒゲが物に触れると、その刺激が脳に伝わり、周囲の環境を認識することができるのです。
特に暗い場所や狭い空間では、ヒゲの感覚が重要になります。ヒゲを使って障害物の有無を確認したり、通り抜けられる隙間の大きさを判断したりすることができます。

1-2コミュニケーションにおける役割

犬のヒゲは、感情表現にも一役買っています。ヒゲの動きや角度によって、犬の気分や意図を読み取ることができるのです。
例えば、ヒゲが前方に向いているときは興味や警戒心を示していることが多く、リラックスしているときはヒゲが自然に下がっています。飼い主さんがこれらの微妙な変化に気づくことで、愛犬の気持ちをより深く理解できるようになるでしょう。
興奮している時には、ヒゲが前方に突き出すように動くことがあります。これは、より多くの感覚情報を得ようとしている状態を表しています。逆に、恐怖や不安を感じている時には、ヒゲが顔の横に張り付くように動くことがあります。

1-3平衡感覚のサポート

犬のヒゲは、体の傾きや動きを感知する役割も果たしています。ヒゲが空気の流れを感じ取ることで、体の傾きや姿勢を調整する手がかりになるのです。
これは特に、動きの激しい遊びや運動をするときに重要です。ヒゲの感覚が平衡感覚をサポートすることで、素早い動きや急な方向転換を可能にしています。
例えば、アジリティ競技に参加する犬では、ヒゲの感覚が障害物の通過や方向転換の際の重要な手がかりとなります。また、サーフィンを楽しむ犬たちも、ヒゲの感覚を使ってボードの上でバランスを取っています。
高齢犬の場合、内耳の機能低下により平衡感覚が衰えることがありますが、そのような場合にもヒゲの感覚が補助的な役割を果たすことがあります。

犬のヒゲをカットする必要性

犬のヒゲには重要な役割がありますが、カットすることが全く許されないわけではありません。状況によっては、ヒゲをカットすることにメリットがある場合もあります。ここでは、ヒゲをカットする必要性について、さまざまな観点から検討してみましょう。

2-1美容的な理由

特に長毛種の犬では、伸びすぎたヒゲが顔周りをもじゃもじゃとさせ、犬の表情が分かりにくくなることがあります。 ヒゲをカットすることで、犬の顔立ちがすっきりと見えるようになり、より愛らしい印象になる可能性があります。
また、ショードッグとして出場する犬の場合、犬種標準に合わせるためにヒゲをカットすることもあるでしょう。 例えば、プードルやシーズー、マルチーズなどの犬種では、定期的なトリミングの一環としてヒゲをカットすることが一般的です。
これらの犬種では、ヒゲを適度な長さに整えることで、犬種特有の可愛らしい表情を引き立たせることができるのです。

2-2衛生面での配慮

長いヒゲは食べ物や水を飲むときに汚れやすく、衛生面で問題になることがあります。特に垂れ耳の犬種では、濡れたヒゲが耳に触れて耳の炎症を引き起こす可能性も少なくありません。ヒゲをある程度短くカットすることで、食事や飲水後の手入れが楽になり、衛生状態を保ちやすくなります。
特に、食べこぼしの多い犬や、よだれの多い犬では、ヒゲのカットが衛生管理に役立つ場合があるのです。 また、アレルギー体質の犬の場合、長いヒゲに花粉やほこりが付着しやすく、症状を悪化させる原因になることがあります。このような場合、適度にヒゲをカットすることで、アレルゲンの付着を減らし、症状の軽減につながる可能性があるでしょう。

2-3医療的な必要性

まれに、医療的な理由でヒゲをカットする必要が生じることがあります。例えば、顔周りの皮膚疾患の治療のために、一時的にヒゲをカットすることもあるでしょう。 皮膚炎や湿疹などの症状がヒゲの周辺に現れた場合、薬の塗布や患部の観察のために、ヒゲをカットする必要が出てくることがあります。
また、口腔内の手術や治療を行う際に、視野確保のためにヒゲをカットすることもあるのです。 さらに、高齢犬や特定の疾患を持つ犬では、食事や水を飲む際にヒゲが邪魔になり、十分な栄養や水分を摂取できない場合があります。このような場合、獣医師の判断のもと、ヒゲをカットすることで食事や飲水を容易にし、栄養状態の改善につなげられる可能性があります。

2-4犬の快適さの向上

場合によっては、ヒゲをカットすることで犬の快適さが向上することもあります。例えば、暑い季節には、長いヒゲが熱を溜め込み、犬に不快感を与える可能性があるでしょう。
適度にヒゲをカットすることで、顔周りの通気性が良くなり、犬がより快適に過ごせるようになる場合があります。 また、長いヒゲが目に当たって犬に不快感を与えている場合もあるのです。このような場合、ヒゲを適度にカットすることで、犬のストレスを軽減できる可能性があります。
ただし、ヒゲのカットが犬の快適さにつながるかどうかは、個々の犬の性格や生活環境によって異なります。なかには、ヒゲをカットされることに強い不快感を示す犬もいるでしょう。犬の反応をよく観察し、個々の犬に合わせた判断をすることが大切です。

犬のヒゲをカットする際の準備

まず、カットに必要な道具を準備しましょう。必要なものは以下の通りです。
・犬用トリミングはさみ
通常の文房具用のはさみは避け、犬用に設計された専用のはさみを使用しましょう。これらのはさみは、犬の毛の質に適しており、安全性も高いです。
・コーム
ヒゲをとかし、もつれを解きほぐすために使用します。金属製のコームよりも、プラスチック製や木製のコームの方が犬にとって優しいでしょう。
・タオル
カット時の毛の処理や、犬の顔を拭くために使用します。清潔で柔らかいタオルを用意しましょう。
・おやつ(犬をリラックスさせるため)
犬の好みのおやつを用意します。これは、カットの前後や途中で犬をリラックスさせ、ポジティブな経験を作るために重要です。
・照明
十分な明るさを確保することが大切です。自然光が最適ですが、必要に応じて追加の照明を用意しましょう。
・消毒液
はさみやコームを清潔に保つために、アルコールベースの消毒液を用意します。
カットを始める前に、犬を落ち着かせることが重要です。普段からよく触れている場所で、リラックスした状態で行いましょう。カットの15-30分前に短い散歩に連れ出すのも良い方法です。これにより、犬の余分なエネルギーを発散させ、よりリラックスした状態でカットに臨むことができます。
また、カットを行う場所は、犬にとって快適で安全な環境であることが重要です。騒音や他の動物からの干渉がない静かな場所を選びましょう。床が滑りにくく、犬が安定して立てる場所が理想的です。

犬のヒゲの正しいカット方法

犬のヒゲをカットする際は、安全で効果的な方法で行うことが大切です。以下に、正しいカット方法のステップを説明します。ただし、初めてヒゲのカットを行う場合や、不安がある場合は、専門家(トリマーや獣医師)に相談することをおすすめします。

4-11.犬を安定した姿勢に保つ

犬を安定した姿勢に保ちます。小型犬の場合は膝の上に乗せる、大型犬の場合はテーブルの上に乗せるなど、安全で快適な姿勢を取らせます。

4-22.コームでヒゲをとかす

コームでヒゲをとかし、もつれをほぐします。これにより、カットしやすくなるとともに、ヒゲの長さを均一に整えやすくなります。コーミングの際は、優しく丁寧に行い、犬に不快感を与えないように注意しましょう。もつれが強い場合は、無理に引っ張らず、少しずつほぐしていきます。

4-33.顔を支える

利き手でハサミを持ち、もう一方の手で犬の顔を優しく支えます。突然の動きに備え、常に犬の様子に注意を払いましょう。顔を支える手は、犬の顎の下や頬に軽く添えるようにします。これにより、カット中の急な動きを防ぐことができます。

4-44.カットする

ヒゲの先端から少しずつカットしていきます。一度に大量にカットするのではなく、少量ずつ慎重に進めます。カットの際は、はさみを平行に当て、斜めにカットしないよう注意します。斜めにカットすると、ヒゲが不自然な形になったり、犬の皮膚を傷つけたりする可能性があります。
ヒゲの根元から3〜5mm程度の長さを残すようにしましょう。根元まで切ってしまうと、神経を傷つける可能性があります。また、あまり短くカットしすぎると、犬の感覚に大きな影響を与える可能性があります。左右均等になるよう、バランスに気をつけてカットします。一方だけを短くカットすると、犬の感覚のバランスが崩れる可能性があります。定期的に全体のバランスを確認しながら作業を進めましょう。
カットの途中で、こまめに犬の様子を確認し、必要に応じて休憩を取りましょう。犬がストレスを感じている様子が見られたら、一旦カットを中断し、犬をなだめたり、おやつを与えたりしてリラックスさせます。無理にカットを続けると、犬にとって不快な経験となり、将来的なケアを難しくする可能性があります。

4-5タオルで優しく拭き取る

カット終了後、タオルで顔周りを優しく拭き、残った毛を取り除きます。この際、目や耳に毛が入らないよう注意しましょう。また、カット後の皮膚の状態も確認します。赤みや腫れがないか、よく観察してください。
カット後は、犬を十分にほめ、おやつを与えるなど、ポジティブな経験として締めくくりましょう。これにより、次回のカットをより円滑に行うことができます。
使用した道具は、使用後に必ず洗浄し、消毒します。特にはさみは、次回使用する際に清潔な状態であることが重要です。

4-6プロのトリマーに依頼する

自宅でのカットに不安がある場合や、より高品質な仕上がりを求める場合は、プロのトリマーに依頼するのも良い選択肢です。トリマーは犬の扱いに慣れており、適切な道具と技術を持っています。
特に初めてヒゲをカットする場合や、神経質な犬の場合は、プロに任せることで安全かつストレスの少ないカットが可能になります。プロのトリマーは、犬種ごとの特性や個々の犬の性格を考慮しながら、最適なカットを行います。トリマーに依頼する際は、以下の点に注意しましょう。
事前に犬の健康状態や気質について、トリマーに詳しく伝えます。特に、過去にヒゲのカットでトラブルがあった場合や、特定の部位を触られるのを嫌がる場合などは必ず伝えましょう。希望するヒゲの長さや形状について、具体的に伝えます。可能であれば、写真などの視覚資料を用意するとより伝わりやすいでしょう。
カット後の犬の様子をよく観察し、何か気になる点があれば速やかにトリマーに相談します。定期的なカットを行う場合は、同じトリマーに依頼することで、 犬の特性や好みを理解してもらいやすくなります。

犬のヒゲをカットする際の注意点

犬のヒゲをカットする際は、いくつかの重要な注意点があります。愛犬の健康と快適さを守るために、これらの点に気をつけましょう。ヒゲのカットは単なる美容処置ではなく、犬の感覚や生活に影響を与える可能性のある行為です。慎重に判断し、適切に実行することが大切です。

5-1犬の年齢や健康状態を考慮する

若く健康な犬であれば、ヒゲをカットしても大きな問題は生じにくいでしょう。しかし、高齢犬や病気を抱えている犬の場合は慎重に判断する必要があります。
高齢犬は視力や聴力が衰えていることが多く、ヒゲの感覚に頼ることが多いです。そのため、ヒゲをカットすることで周囲の状況把握が難しくなり、ストレスを感じる可能性が高く注意が必要です。高齢犬の場合、ヒゲの感覚が日常生活の安全性を確保する上で重要な役割を果たしていることがあります。例えば、暗い場所での移動や、段差の認識などにヒゲの感覚を利用している可能性があります。

5-2カット方法に注意する

犬のヒゲをカットする際は、適切な方法で行うことが重要です。不適切な方法でカットすると、犬に痛みやストレスを与えてしまう可能性があります。
まず、決してヒゲを引き抜かないようにしましょう。ヒゲの根元には神経が集中しているため、引き抜くと強い痛みを感じます。また、炎症や感染のリスクも高まります。ヒゲを引き抜くことは、犬に強いトラウマを与え、今後の手入れや触れ合いを困難にする可能性があります。
さらに、ヒゲをカットする際は、周辺の皮膚を傷つけないよう注意が必要です。特に、目の周りのヒゲをカットする際は細心の注意を払いましょう。誤って目を傷つけてしまうと、重大な問題につながる可能性があります。

5-3徐々に慣れさせる

初めてヒゲをカットする場合、犬にとっては不安な経験になる可能性があります。急に全てのヒゲを短くカットするのではなく、少しずつ慣れさせていくことが大切です。
最初は少量のヒゲを軽くトリミングする程度にとどめ、犬の反応を見ながら徐々にカットの範囲を広げていきましょう。例えば、最初の1週間は口の周りのヒゲを少しだけカットし、犬の様子を観察します。問題がなければ、次の週に目の周りのヒゲを少しカットするというように、段階的に進めていくのが良いでしょう。
また、おやつなどで犬をリラックスさせることも効果的です。ヒゲのカットを楽しい経験と結びつけることで、犬のストレスを軽減し、将来的なカットをより容易にすることができます。例えば、カットの前後に犬の好きなおやつを与えたり、カット中に優しく話しかけたりするなどの工夫をしましょう。

5-4カット後の観察

ヒゲをカットした後は、犬の様子をよく観察することが重要です。普段と異なる行動や不安な様子が見られないか、注意深く見守りましょう。
例えば、物にぶつかりやすくなる、食事や水を飲むときに戸惑う、顔を壁にこすりつけるなどの行動が見られた場合、ヒゲのカットによるストレスや不快感のサインかもしれません。これらの行動は、ヒゲの感覚が失われたことによる空間認識の変化や、不快感を示している可能性があります。
また、カット直後は犬が顔を頻繁に掻いたり、こすったりすることがあります。これは新しい感覚に慣れようとしている兆候かもしれませんが、過度に続く場合は皮膚への刺激や炎症の可能性もあるため、注意が必要です。
さらに、食欲の変化や活動量の減少、普段と異なる鳴き声などの行動変化にも注意を払いましょう。これらはストレスや不快感のサインである可能性があります。
このような症状が続く場合は、今後ヒゲをカットすることを控えるか、カットする量を減らすなどの対応を考えましょう。場合によっては、獣医師に相談し、適切なアドバイスを求めることも大切です。
また、カット後の数日間は、犬の行動をより注意深く観察し、必要に応じて環境を調整することも考えられます。例えば、暗い場所や狭い空間での移動を一時的に制限したり、食器の位置を調整したりするなどの配慮が必要かもしれません。

5-5季節や環境を考慮する

ヒゲのカットを検討する際は、季節や犬の生活環境も考慮に入れる必要があります。例えば、夏場は暑さ対策としてヒゲを短めにカットすることで、顔周りの通気性を良くし、犬の快適さを向上させることができるかもしれません。
一方で、冬場は寒さ対策として、ヒゲをある程度の長さに保つことで、顔周りの保温効果を維持できます。特に、寒冷地に住む犬や外で多くの時間を過ごす犬の場合、この点は重要です。
また、犬の生活環境によっても考慮すべき点が変わってきます。例えば、主に室内で過ごす犬と、頻繁に外出して自然の中で活動する犬では、ヒゲの必要性が異なる可能性があります。自然の中で活動する機会が多い犬の場合、ヒゲの感覚が周囲の環境を把握する上で重要な役割を果たしていることがあるため、カットには慎重になる必要があるでしょう。

まとめ

犬のヒゲは、見た目の愛らしさだけでなく、重要な感覚器官としての役割も果たしています。カットするかどうかの判断は、愛犬の年齢や健康状態、生活環境などを考慮して慎重に行う必要があります。カットする場合は、適切な方法で行い、愛犬の反応をよく観察しましょう。日々のケアを通じてヒゲの状態をチェックすることで、健康上の問題を早期に発見できる可能性もあります。愛犬のヒゲを大切にケアすることは、全身の健康管理にもつながります。飼い主さんと愛犬のより良い関係づくりの一環として、ヒゲのケアを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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