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ハンドメイドの著作権はどこまで?侵害に当たるケースやトラブルの対処法

ハンドメイド作品の制作・販売を楽しむ人が年々増えています。SNSやハンドメイドマーケットの普及により、作品を発表・販売する機会も広がっています。しかし、せっかく丹精込めて作った作品が思わぬトラブルを引き起こすことも少なくありません。その代表的な原因が著作権の問題です。本記事では、ハンドメイド作品における著作権の基礎知識から具体的な対策まで、わかりやすく解説していきます。
ハンドメイドの著作権はどこまで?侵害に当たるケースやトラブルの対処法

目次
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知っておきたい!著作権の基本

ハンドメイド作品の制作・販売を始める前に、まずは著作権の基本的な知識を身につけましょう。

1-1著作権って何だろう?

著作権は、作品を作った人を守るための大切な権利です。小説や絵画、音楽、写真など、人が創り出した表現には必ず著作権が発生します。この権利は知的財産権の一つで、作品を作ったり表現したりした時点で自動的に発生するという特徴があります。面白いことに、特許などと違って申請や登録の手続きは必要ありません。
著作権には、作品を複製する権利や、公開する権利など、さまざまな権利が含まれています。対象となるのは、自分自身で作り出した文化的な創造物全般です。言葉や美術、音楽などの表現は、人が自分で考えて形にした瞬間から著作権によって保護されます。この権利は作者本人に与えられ、他人の無断使用から作品を守ります。
作品を守る権利は一生涯続き、さらに作者が亡くなった後も70年間は保護されます。その間、作品を利用する場合は原則として作者や権利を引き継いだ人の許可が必要になります。

1-2ハンドメイド作品の場合は?

ハンドメイド作品における著作権は、少し複雑です。作品の性質によって、著作権による保護の範囲が変わってくるためです。例えば、あなたがオリジナルのキャラクターをデザインして作ったぬいぐるみには、しっかりと著作権が発生します。なぜなら、そこにはあなたの独創的な表現が詰まっているからです。
一方で、一般的なトートバッグを作っただけの場合は、著作権による保護を受けることが難しいかもしれません。基本的な形状や、ありふれたデザインには著作権が発生しにくいのです。同じように、制作技法やアイデアそのものも、著作権では保護されません。
大切なのは、作品にどれだけオリジナリティや創造性が込められているかということです。作品に込められた独自の工夫や表現が多ければ多いほど、著作権による保護を受けやすくなります。逆に、誰でも思いつくような一般的なデザインや、ありふれた組み合わせだけの作品は、保護を受けにくくなってしまいます。

これは絶対NG!著作権侵害になるケース

ハンドメイド作品を作る際に、思わず陥りがちな著作権侵害。どんな場合に問題になるのか、具体的に見ていきましょう。

2-1キャラクターやブランドロゴを使った作品

人気キャラクターやブランドのロゴを使った作品の販売は、著作権侵害となります。

「みんなが作っているから大丈夫」
「少しだけ変えたから問題ない」

という考えは危険です。具体的に説明すると、ディズニーキャラクターのぬいぐるみを作って販売したり、シャネルのロゴを真似たアクセサリーを作ったり、ポケモンをモチーフにしたグッズを作ることは、すべて権利侵害になります。
たとえ、デザインを少し変更したり、「インスパイア作品です」と断りを入れたりしても、権利侵害であることに変わりはありません。特に有名なキャラクターやブランドの場合、企業が権利を守るために、定期的に模倣品やパロディ商品の取り締まりを行っています。
もし権利侵害が発覚すると、作品の販売中止はもちろん、損害賠償を請求されることもあります。さらに悪質な場合は、著作権法違反で刑事罰を科されることもあるのです。個人で楽しむ分にはほとんどの場合問題になりませんが、販売となると話は別です。安易な利用は避けるようにしましょう。

著作権侵害の罰則

著作権侵害の結果として課される罰則について、実際に起きた事例を交えながら詳しく見ていきましょう。

3-1実際に起きた著作権侵害の事例

近年、SNSやフリマアプリの普及により、ハンドメイド作品の著作権侵害が増加しています。2023年には、人気キャラクターを無断使用したハンドメイドアクセサリーを販売していた作家が逮捕される事件が発生しました。
また、有名ブランドのロゴを模した小物を販売していた出店者が、ブランド側から警告を受けて販売中止に追い込まれるケースも報告されています。
さらに、著名なハンドメイド作家のデザインを模倣した商品を販売していた人が、SNSで特定され炎上する事態も起きています。こうした事例の多くは、「趣味で少しだけ」「みんなもやっている」という安易な考えから始まっていることが特徴です。

3-2著作権侵害の罰則

著作権侵害に対する罰則は、民事上の措置と刑事上の措置に分かれます。民事上の措置としては、販売差止めや損害賠償請求があります。
例えば、無断でキャラクターグッズを販売していた場合、その売上の何倍もの賠償金を請求される可能性があります。一方、刑事上の措置としては、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはその両方が科されることがあります。
特に悪質な場合や、警告を無視して販売を続けた場合などは、実刑判決を受けるケースもあります。商標権や意匠権の侵害についても、同様に厳しい罰則が設けられています。

生地や材料選びで気をつけること

ハンドメイド作品を作る際、使用する材料の選び方は非常に重要です。特に生地選びは、思わぬトラブルのもとになることがあります。

4-1「商用利用不可」の生地は使えない

手芸店で目にする可愛いキャラクター生地。思わず購入したくなりますが、ほとんどの場合「商用利用不可」という制限があります。これは、その生地を使って作品を作り、販売することが禁止されているということです。
例えば、人気キャラクターがプリントされた生地でポーチを作って販売すると、著作権侵害になってしまいます。生地そのものは合法的に購入したものであっても、それを使って作った作品を販売することはできないのです。このような制限は、生地の包装や商品タグに記載されていることが多いですが、記載がない場合は販売店やメーカーに確認する必要があります。
また、生地に描かれた模様やデザインにも著作権が存在することがあります。一見、一般的な柄に見えても、デザイナーが創作した独自のパターンである可能性があります。特に、ブランドものの生地を使用する際は注意が必要です。

4-2ブランドによってルールが違う!

生地の商用利用に関するルールは、ブランドによって大きく異なります。なかには完全に商用利用を禁止しているブランドもあれば、申請すれば使用を許可してくれるブランド、商品にタグを付ける条件で認めてくれるブランドなど、さまざまです。
例えば、マリメッコやリラックマの生地は商用利用が禁止されています。一方で、一般的な花柄や幾何学模様の生地であれば、通常は問題なく使用できます。ただし、これも生地のメーカーや販売元によってルールが異なることがあるので、事前の確認が欠かせません。
特にハンドメイド作品を本格的に販売しようと考えている場合は、使用する生地や材料の権利関係をしっかりと確認することが重要です。わからない場合は、必ずメーカーや販売店に問い合わせるようにしましょう。一度確認した内容は記録として残しておくと、後々のトラブル防止に役立ちます。

私的使用と商用利用の違い

ハンドメイド作品の制作において、個人で楽しむ場合と販売目的の場合では、著作権の扱いが大きく異なります。この違いを正しく理解することが、トラブルを防ぐ鍵となります。

5-1個人で楽しむ分にはOK

自分のために作品を作ったり、家族や親しい友人にプレゼントしたりする場合は、ほとんどの場合問題ありません。これは著作権法で認められている「私的使用」に当たるためです。
具体的には、お子さんの誕生日に好きなキャラクターの衣装を手作りしたり、親しい友人の結婚祝いにブランドをモチーフにした小物を作ったりするのは問題ありません。また、自分で使うためにブランドロゴ入りのバッグを作ることも、私的使用の範囲内です。
ただし、私的使用にも限度があります。配布する相手は、家族や親しい友人など、ごく少人数に限られます。「両手で抱えられる程度の人数」が目安とされており、おおよそ2〜3人程度までと考えられています。

5-2でも、これは要注意!

私的使用の範囲を超えてしまう場合があることも覚えておく必要があります。例えば、学校のクラス全員や職場の同僚全員にプレゼントとして配るのは、私的使用の範囲を超えてしまいます。たとえ無料で配布する場合でも、不特定多数への配布は著作権侵害となる可能性があります。
また、SNSでの作品紹介も要注意です。インスタグラムやTwitterなどのSNSに作品写真を投稿することは、不特定多数への公開にあたります。そのため、私的使用の範囲を超えてしまう可能性があります。特に、キャラクターものやブランドものの作品を投稿する際は注意が必要です。
さらに、「材料費だけ」という名目でお金を受け取る場合も、実質的な販売行為とみなされる可能性があります。たとえ利益を得ない場合でも、対価を受け取ることで私的使用の範囲を超えてしまうことがあるのです。
ポイントは、作品を楽しむ範囲が「私的な領域」に留まっているかどうかです。不特定多数の人に広がる可能性がある場合は、著作権侵害のリスクがあると考えて慎重に判断する必要があります。

SNSでの作品公開と著作権

SNSは作品の宣伝や発表の場として欠かせない存在になっていますが、著作権に関する注意点がいくつかあります。正しい知識をもって、安全に活用していきましょう。

6-1写真投稿の注意点

SNSに作品写真を投稿する際は、思わぬトラブルを避けるため、いくつかの点に注意する必要があります。まず、作品の撮影時には背景に気を配りましょう。市販のキャラクターグッズや著作権のある商品が写り込まないよう注意が必要です。
また、他の作家さんの作品を参考にした場合も要注意です。「参考にしました」と記載したとしても、そっくりな作品を投稿すれば問題となる可能性があります。デザインや構図が似ているだけでも、著作権侵害と指摘されるケースがあります。作品写真を撮る際は、自分の作品のオリジナリティが最大限に表現できるよう工夫しましょう。
投稿する写真自体にも著作権が発生します。自分で撮影した写真の権利は自分にありますが、他人の写真を無断で使用することはできません。例えば、商品の使用例として他人の着用写真を使ったり、参考作品として他人の作品写真を使ったりすることは避けましょう。

6-2ハッシュタグの使い方

SNSでよく使用されるハッシュタグですが、ブランド名やキャラクター名を安易に使用すると問題になることがあります。特に、有名ブランドやキャラクターの名称は、商標登録されていることが多いためです。
例えば、ディズニーのキャラクターをモチーフにした作品に「#ディズニー」とタグ付けすると、権利者から警告を受ける可能性があります。また、「風」や「風モチーフ」といった言葉を付けても、明らかに特定のキャラクターやブランドを連想させる場合は問題となることがあります。
代わりに、作品の素材や技法に関するハッシュタグを使用するのがおすすめです。
「#ハンドメイド」
「#手作り」
「#レース編み」
など、一般的な用語を使うことで、著作権の問題を避けながら作品をアピールできます。また、自分のオリジナルハッシュタグを作成して、ブランディングに活用するのも良い方法です。
ただし、たとえハッシュタグを工夫しても、投稿する作品自体に著作権の問題がある場合は注意が必要です。SNSでの公開は不特定多数への発信となるため、より慎重な判断が求められます。

もし著作権侵害をしてしまったら?

著作権侵害は、意図せずに起こってしまうことも少なくありません。もし自分が著作権を侵害してしまったことに気づいた場合や、指摘を受けた場合の適切な対応について解説します。

7-1すぐにすべきこと

著作権侵害に気づいたり指摘を受けたりした場合、まず最初にすべきことは販売や掲載を直ちに中止することです。これは自分から気づいた場合でも、他者から指摘された場合でも同じです。速やかな対応が、問題の拡大を防ぐ第一歩となります。
手元に在庫がある場合は、それらの販売も中止しなければなりません。たとえ商品を作るために時間や材料費をかけていたとしても、著作権を侵害している商品を販売し続けることはできません。また、SNSなどで作品を紹介している場合は、該当する投稿も削除する必要があります。
このとき重要なのは、問題のある商品や投稿をすべて確認し、漏れなく対応することです。一部だけ対応して他は放置というのでは、誠意ある対応とは言えません。自分の作品や投稿を総点検し、同様の問題がないかしっかりと確認しましょう。

7-2警告を受けた場合の対応

権利者から警告を受けた場合は、まず誠実な謝罪をすることが大切です。感情的になったり、言い訳をしたりすることは避け、冷静に対応することを心がけましょう。権利者の指摘に対して真摯に耳を傾け、問題点を理解することが重要です。
指摘された作品については、直ちに販売・展示を中止します。また、今後同様の作品を作らないことを約束し、確実に実行することも必要です。場合によっては、すでに販売してしまった商品の回収や、得た利益の返還を求められることもあります。
誠意を持って対応することで、多くの場合は話し合いによる解決が可能です。しかし、対応が不適切だったり、悪質な侵害と判断されたりした場合は、法的措置に発展することもあります。そのような事態を避けるためにも、速やかで誠実な対応を心がけましょう。

安全に作品を作るためのポイント

ハンドメイド作品を楽しく続けていくためには、著作権を意識した安全な制作が欠かせません。ここでは、トラブルを防ぎながら創作活動を続けていくためのポイントを詳しく見ていきましょう。

8-1オリジナル作品を作ろう

オリジナル作品を作ることは、著作権トラブルを防ぐ最も確実な方法です。自分だけのデザインを考え、素材の組み合わせを工夫することで、独自の魅力を持った作品が生まれます。最初は難しく感じるかもしれませんが、これが作家としての成長につながります。
オリジナル作品を作る際のポイントは、まず市場調査をすることです。すでに似たような作品が存在していないか、確認することが大切です。また、アイデアスケッチを重ねたり、試作品を作ったりしながら、自分らしさを追求していきましょう。作品に込める想いや、制作過程での工夫が、作品の価値を高めることにつながります。
さらに、自分の作風やブランドイメージを確立することも重要です。一貫したデザインや品質を保つことで、オリジナリティがより際立ち、ファンを獲得しやすくなります。自分の作品に誇りを持ち、大切に育てていく気持ちが、良い作品づくりの基礎となるのです。

8-2参考にするならここまで

他の作家の作品からインスピレーションを得ることは自然なことですが、どこまでが参考で、どこからが模倣になるのか、その境界線をしっかりと理解しておく必要があります。基本的な技法やアイデアを学ぶことはOKですが、デザインや特徴的な要素をそのまま真似ることは避けなければなりません。
作品を参考にする場合は、必ず自分なりのアレンジを加えましょう。素材や色使い、形状など、複数の要素で変化をつけることで、オリジナリティのある作品に生まれ変わります。また、参考にした作品との違いを明確に説明できることも重要です。

「どこをどのように変えたのか」
「なぜそのような変更を加えたのか」

を説明できることが、健全な創作活動の証となります。

トラブルを防ぐための予防策

著作権トラブルは、事前の対策で防げることが多くあります。日頃から意識して取り組むべき予防策について、詳しく見ていきましょう。

9-1制作前のチェックポイント

作品を作り始める前に、必ずいくつかの確認をすることが大切です。まず、使用予定の素材が商用利用可能かどうかを確認します。生地や材料のパッケージ、説明書などをしっかりと読み、不明な点があれば販売元やメーカーに問い合わせましょう。「たぶん大丈夫だろう」という曖昧な判断は、後々のトラブルの原因となります。
次に、作ろうとしている作品が他者の著作権や商標権を侵害していないかを確認します。特に、人気キャラクターやブランドに似たデザインを使う場合は要注意です。「少し変えれば大丈夫」という考えは危険です。完全なオリジナル作品を目指すか、必要な許諾を得てから制作を始めましょう。
作品のオリジナル性についても、事前にチェックが必要です。似たような商品が市場に出回っていないか、他の作家さんの作品と重なる部分はないかなど、インターネットや実店舗で調査することをおすすめします。独自の工夫や特徴を加えることで、より魅力的な作品が生まれます。

9-2記録を残しておく

作品制作の過程を記録として残しておくことは、とても重要です。まず、デザインスケッチや構想メモを保管しておきましょう。これらは、自分がオリジナルで作品を考案したことを証明する重要な証拠となります。デジタルデータの場合は、作成日時が分かるよう保存しておくことをお勧めします。
制作過程の写真も、できるだけ詳しく残しておきましょう。材料の購入から完成までの各段階を写真に収めておくことで、オリジナル作品であることの証明になります。また、作品の進化や改良の記録としても役立ちます。
材料の購入記録や領収書なども大切に保管します。商用利用可能な材料を使用していることを証明する際に役立つほか、経費管理の面でも重要です。これらの記録は、デジタルデータとして保存するだけでなく、紙の記録としても残しておくと安心です。

まとめ

ハンドメイド作品の制作・販売は、作り手の想いと技術が詰まった素敵な営みです。しかし、著作権に関する正しい知識がないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。大切なのは、他者の権利を尊重しながら、自分の作品も守っていく意識を持つことです。
作品制作の際は、使用する素材の確認から、デザインのオリジナリティ、販売方法まで、しっかりとチェックしましょう。また、記録を残すことで、後々のトラブルを防ぐことができます。著作権の知識は、クリエイターとして活動していく上での大切な基盤となります。

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