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ハンドメイドの売上の税金や確定申告は?節税の方法も合わせて解説

昨今のハンドメイドブームで、趣味で始めた創作活動が収入につながるケースが増えています。しかし、「税金の計算方法がわからない」「確定申告は必要なのか不安」「経費の範囲がよくわからない」といった声をよく耳にします。本記事では、ハンドメイド作家さんが知っておくべき税金の基礎知識から、確定申告の方法、効果的な節税方法まで、詳しく解説していきます。
ハンドメイドの売上の税金や確定申告は?節税の方法も合わせて解説

目次
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ハンドメイド販売と税金

ハンドメイド作品の販売を始めると、必ず直面するのが税金の問題です。趣味で始めた創作活動でも、収入が発生すれば適切な税務処理が必要になります。まずは、なぜ税金を払う必要があるのか、そして副業と本業での違いについて理解していきましょう。

1-1そもそも、なぜ税金を払う必要があるの?

ハンドメイド作品の販売で得た収入に対して税金を払う必要があるのは、日本の税制の基本的な考え方に基づいています。所得税法では、個人の得る収入は、その形態や金額の大小に関わらず、原則としてすべて課税対象となると定められています。これは、社会の共通経費である税金を、収入のある人々が公平に負担するという考え方に基づいています。
たとえば、会社員として働いている場合、給与から自動的に所得税が引かれていることを経験していると思います。これは「源泉徴収」と呼ばれる制度で、会社が従業員に代わって税金を納める仕組みです。一方、ハンドメイド販売のような個人事業の場合は、自分で収入を計算し、確定申告を通じて税金を納める必要があります。
税金を納めることは、道路や学校、病院といった公共サービスを維持するための社会的責任であり、また事業者として認められるための重要な義務でもあります。適切に税金を納めることで、より安定した創作活動を続けることができるのです。

1-2副業と本業で違いはあるの?

ハンドメイド販売を行う場合、副業として始める方と専業として取り組む方では、税務上の取り扱いが異なります。この違いを理解することは、適切な税務管理の第一歩となります。
副業としてハンドメイド販売を行う場合、年間の所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。ここで重要なのは、給与所得とは別に計算するということです。たとえば、会社員として働きながらハンドメイド作品を販売している場合、会社からの給与とは別に、ハンドメイド販売による所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。
一方、専業としてハンドメイド販売を行う場合、たとえば専業主婦(主夫)の方が副業ではなくメインの収入源としてハンドメイド販売を行う場合は、年間の所得が38万円を超えると確定申告が必要です。これは、基礎控除の額に基づいて設定された基準です。また、配偶者の扶養控除に影響する可能性もあるため、収入が発生した時点で税理士に相談することをお勧めします。
専業でハンドメイド販売を行う場合は、個人事業主としての自覚を持ち、より計画的な税務管理が必要になります。月々の収支管理はもちろん、将来的な事業拡大も視野に入れた税務戦略を考えることが重要です。

1-3個人事業主として開業届は必要?

ハンドメイド販売を定期的に行う場合、個人事業主として開業届を提出することを検討する必要があります。開業届は、事業を始めたことを税務署に届け出る書類で、提出することで正式な事業者として認められます。
開業届の提出は、事業開始から1ヶ月以内に行うことが原則です。ただし、提出が遅れたからといって罰則があるわけではありません。気づいた時点で提出することが大切です。開業届を提出すると、青色申告の承認申請も同時に行うことができます。青色申告は、後述する節税対策において非常に重要な役割を果たします。
開業届の提出にあたっては、事業の形態や規模を考慮する必要があります。たとえば、月に1-2回程度のイベント出店だけを行う場合は、必ずしも開業届を提出する必要はないかもしれません。しかし、オンラインショップを開設して定期的に販売を行う場合や、実店舗を持つ場合は、開業届の提出を強く推奨します。
開業届を提出することで、確定申告時の手続きがスムーズになるだけでなく、事業用の銀行口座の開設や、各種保険への加入なども容易になります。また、将来的に事業を拡大する際の信用力にもつながります。

確定申告の基礎知識

確定申告は、一年間の収入と経費を計算し、納めるべき税金額を確定させる大切な手続きです。ハンドメイド作家にとって、この確定申告の知識は事業を継続していく上で必須となります。では、具体的にどのような場合に確定申告が必要になり、どのように準備すればよいのでしょうか。

2-1確定申告が必要なケースとは

確定申告の必要性は、ハンドメイド作品の販売形態や収入状況によって異なってきます。基本的な判断基準として、副業の場合は年間所得が20万円を超えた時、専業主婦(主夫)の場合は38万円を超えた時に確定申告が必要となります。
具体的な例で考えてみましょう。会社員として働きながらハンドメイド作品を販売している場合、年間の売上が100万円あったとします。この時、材料費や販売経費などで70万円かかっていれば、所得は30万円となります。この場合、所得が20万円を超えているため、確定申告が必要です。会社からの給与所得とは別に、このハンドメイド販売による所得について申告しなければなりません。
また、専業主婦(主夫)の方がハンドメイド作品を販売する場合、たとえば年間売上が80万円で経費が35万円だとすると、所得は45万円となります。この場合、38万円の基準を超えているため、確定申告が必要になります。さらに、配偶者の扶養控除にも影響が出る可能性があるため、事前に税理士に相談することをお勧めします。
注意が必要なのは、複数の収入源がある場合です。たとえば、ハンドメイド販売の他にも、講師として教室を開いたり、イベントの企画運営を行ったりする場合、これらの収入も合算して所得を計算します。それぞれの収入が少額でも、合計で基準額を超えれば確定申告が必要になります。

2-2収入と所得の違いを理解しよう

税務申告において最も重要な概念の一つが、「収入」と「所得」の違いです。この違いを正確に理解することで、適切な確定申告が可能になり、また効果的な節税対策を立てることもできます。
収入とは、文字通り入ってきたお金の総額を指します。ハンドメイド販売で言えば、作品の売上金額がこれにあたります。たとえば、一つ5,000円の作品を年間100個販売すれば、収入は50万円となります。これには、販売手数料やポイント還元分なども含めて考える必要があります。
一方、所得とは収入から必要経費を差し引いた金額を指します。先ほどの例で、一つの作品を作るのに材料費が2,000円かかるとすると、100個分で20万円の経費となります。さらに、販売手数料や送料、作業場所の家賃、光熱費など、販売に関わる諸経費が15万円かかったとすると、総経費は35万円となります。この場合、50万円の収入から35万円の経費を引いた15万円が所得となります。
この所得の金額が、確定申告の要否を判断する基準となり、また実際に課税される金額の基礎となります。そのため、日々の収入と経費を正確に記録し、適切に所得を計算することが非常に重要です。記録は面倒に感じるかもしれませんが、スマートフォンのアプリやエクセルなどを活用して、効率的に管理することをお勧めします。

経費として認められるものとは

ハンドメイド作家の節税において、経費の把握と適切な計上は非常に重要です。しかし、「何が経費として認められるのか」「どこまでを経費として計上できるのか」という点で迷う方も多いでしょう。ここでは、具体的な経費項目とその計上方法について詳しく解説していきます。

3-1材料費・道具代

ハンドメイド作品の制作に直接関わる材料費や道具代は、最も基本的な経費として認められます。材料費には、作品を作るために使用する布やビーズ、革、糸などの消耗品が含まれます。これらは作品制作に直接使用される分だけでなく、試作品や失敗作に使用した分も経費として認められます。
道具代については、はさみ、ニッパー、ミシンなどの工具や機械、作業机、椅子なども経費として計上できます。ただし、高額な機械や設備の場合は、一括での経費計上ではなく「減価償却」という方法で複数年に分けて経費計上する必要があります。たとえば、20万円のミシンを購入した場合、耐用年数に応じて毎年一定額ずつ経費として計上していきます。
作業場所として自宅の一部を使用している場合、その部分に応じた家賃や光熱費も経費として認められます。ただし、生活スペースとの明確な区分けが必要で、使用割合に応じた適切な按分計算が求められます。たとえば、自宅の一室を作業場として使用している場合、その部屋の広さが家全体の20%であれば、家賃や光熱費の20%を経費として計上できます。

3-2販売に関する経費

販売活動に関連する費用も、重要な経費項目として認められます。ネットショップの場合、出店料や販売手数料、決済手数料などが該当します。また、商品の配送料や梱包材費用、商品写真の撮影費用なども経費として認められます。
実際の販売イベントやマルシェに参加する場合は、出店料やブース装飾費用、ディスプレイ用品、のぼりやポスターなどの販促物、交通費なども経費として計上できます。また、在庫管理用の棚や収納ボックス、値札やショップカードの印刷費用なども販売に必要な経費として認められます。
販売促進のための広告費用も重要な経費項目です。SNSの広告費用、チラシやカタログの制作費、ウェブサイトの制作・維持費用なども経費として計上できます。また、顧客管理や売上管理のためのソフトウェア利用料、事務用品費なども、事業に必要な経費として認められます。

3-3その他の経費

事業の発展や技術向上のための費用も、経費として認められる場合があります。たとえば、技術習得のための講習会参加費、専門書や参考書の購入費、研究開発のための材料費なども経費として計上できます。また、作品のクオリティ向上のために必要な設備投資や、新商品開発のための試作費用なども経費として認められます。
通信費や交通費については、事業使用分を適切に区分けすることで経費として計上できます。たとえば、携帯電話やインターネットの利用料は、事業使用の割合を明確にした上で、その分を経費として計上できます。また、材料の仕入れや展示会への参加のための交通費も、領収書やルートを記録しておくことで経費として認められます。

ハンドメイド売上の節税ポイント

確定申告では、適切な経費計上と控除の活用により、納税額を適正に抑えることができます。ここでは、ハンドメイド作家が活用できる具体的な節税方法について解説していきます。これらの方法を上手く活用することで、より効率的な税務管理が可能になります。

4-1青色申告のメリットを活用しよう

青色申告は、個人事業主にとって非常に有効な節税手段です。通常の確定申告(白色申告)と比べて、より詳細な帳簿作成が求められますが、その分大きな税制上の優遇を受けることができます。
青色申告の最大のメリットは、「青色申告特別控除」を受けられることです。取引を正確に記帳し、複式簿記で帳簿を作成する場合、最大65万円の所得控除を受けることができます。たとえば、年間所得が100万円の場合、青色申告特別控除を利用することで、課税対象となる所得を35万円まで下げることができます。これにより、納税額を大きく減らすことが可能です。
さらに、青色申告には「損失の繰越控除」というメリットもあります。事業で赤字が出た場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。たとえば、新商品の開発や設備投資で一時的に赤字になった場合でも、将来の黒字と相殺することで税負担を平準化できます。
また、青色申告を行うことで、事業専従者給与の必要経費算入も可能になります。家族従業員を雇用している場合、一定の要件を満たせば、その給与を経費として計上できます。これは、家族で協力して事業を行う場合の重要な節税ポイントとなります。
ただし、青色申告を始めるためには、事前に税務署への申請が必要です。また、日々の取引を正確に記帳し、帳簿や領収書を適切に保管する必要があります。このため、会計ソフトの導入や税理士への相談を検討することをお勧めします。

4-2経費をしっかり記録する

効果的な節税を行うには、日々の経費を正確に記録し、適切に管理することが不可欠です。この記録は、単なる税務上の義務ではなく、事業の収支を把握し、経営判断を行うための重要な情報源にもなります。
経費の記録では、まず領収書やレシートを必ず保管することが基本です。デジタル化が進む現代では、スマートフォンで領収書を撮影し、クラウド上に保存する方法も効果的です。また、クレジットカードの利用明細やネットバンキングの取引履歴なども、経費の証拠として活用できます。
記録する際は、経費の内容を具体的に記載することが重要です。たとえば、「材料費」と一括りにするのではなく、「アクセサリーパーツ購入」「包装資材購入」など、具体的な用途を記録します。これにより、後から経費の内容を確認しやすくなり、確定申告時の作業も効率化できます。

確定申告の具体的な方法

ここまで税金の基本や経費の考え方について説明してきましたが、実際の確定申告はどのように行えばよいのでしょうか。手続きの方法や必要書類、申告書の作成手順について、順を追って説明していきましょう。

5-1必要な書類の準備

確定申告を行うためには、1年間の収支を証明するための書類が必要になります。まず基本となるのは、日々の売上を記録した売上台帳です。手書きのノートでも、エクセルで作成したデータでも構いません。大切なのは、いつ、どの商品が、いくらで売れたのかが明確にわかることです。
経費関係の書類も重要な証拠となります。材料の購入レシートや、イベント出店料の領収書、送料の控えなど、支出を証明できる書類をすべて保管しておく必要があります。特に、高額な設備や機械を購入した場合の証明書類は、複数年にわたって保管が必要となるため、紛失しないよう注意が必要となるでしょう。
また、個人番号(マイナンバー)の確認書類も必須です。マイナンバーカードを持っている方はそれを、持っていない方は通知カードと身分証明書を用意します。さらに、確定申告書に押印する認印も忘れずに準備しましょう。青色申告を行っている場合は、日々の取引を記録した帳簿も必要になります。

5-2申告書の書き方のポイント

確定申告書の作成は、初めての方にとっては少し難しく感じるかもしれません。しかし、基本的な手順を理解すれば、それほど複雑なものではありません。まずは年間の総収入を計算することから始めます。売上台帳をもとに、すべての販売収入を合計していくのがスタートとなります。
次に、この1年間にかかった経費を項目ごとに集計していきます。材料費、販売経費、通信費など、それぞれの費用を分類して合計することが大切です。この時、個人的な支出と事業用の支出を明確に区別することを忘れないようにしましょう。
収入から経費を差し引いて所得金額を算出したら、各種所得控除を適用します。青色申告特別控除や、社会保険料控除、基礎控除など、適用できる控除をすべて確認します。最後に、控除後の課税所得に基づいて税額を計算し、申告書に記入していきます。

5-3申告方法の選択

確定申告書の提出方法には、主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選びましょう。
最近特に利用が増えているのが、インターネットを使った電子申告(e-Tax)です。自宅のパソコンやスマートフォンから24時間いつでも申告が可能で、入力内容のチェック機能もあるため、記入ミスを防ぐことができます。マイナンバーカードがあれば、ICカードリーダーやスマートフォンを使って手軽に申告できるのが魅力となっています。
2つ目の方法は、確定申告書を郵送で提出する方法です。申告書を自宅で作成し、必要書類を添付して税務署に郵送します。手書きでじっくり作成できる反面、記入ミスがあった場合の修正に時間がかかる可能性があるため、提出前に十分な確認が大切になります。
3つ目は、税務署に直接出向いて申告する方法です。申告書の書き方がわからない場合でも、窓口で相談しながら作成できるのがメリットです。特に初めて確定申告をする方や、複雑な申告内容がある方には、この方法がおすすめでしょう。ただし、確定申告期間中は窓口が混雑するため、時間に余裕を持って訪問することが重要です。

トラブルを防ぐために

確定申告に関するトラブルを防ぐためには、日頃からの準備と適切な対応が欠かせません。ここからは、トラブルを未然に防ぐためのポイントと、もし問題が発生した場合の対処法について説明していきます。

6-1日々の記録をしっかりと

事業の収支を正確に把握するには、日々の記録が不可欠です。売上があった時は、商品名や金額、販売方法などを必ずメモに残します。現金での取引はもちろん、クレジットカードやスマホ決済など、支払方法に関わらずすべての取引を記録することが大切なのです。

6-2専門家に相談しよう

税務に関する悩みは、一人で抱え込まずに専門家に相談することをお勧めします。税務署では、確定申告に関する無料相談を実施しています。特に、これから確定申告を始める方や、経費の計上方法に不安がある方は、ぜひ活用してみましょう。税務署の職員が丁寧に説明してくれるため、疑問点を解消できます。
より詳しいアドバイスが必要な場合は、税理士への相談も検討に値します。税理士は税務のプロフェッショナルとして、あなたの事業状況に合わせた具体的なアドバイスを提供できます。たとえば、売上が増えてきた場合の税務戦略や、事業拡大に向けた会計システムの導入など、専門的な観点からサポートを受けられるのが特徴です。
最近では、記帳代行サービスを利用する方も増えています。日々の取引データを入力するだけで、専門家が帳簿の作成や確定申告の準備をサポートしてくれます。確かに費用はかかりますが、時間を創作活動に集中できる点では、十分な価値があるでしょう。手作業での記帳に不安を感じる方や、作品作りに時間を使いたい方には、特におすすめの選択肢となります。

まとめ

ハンドメイド作品の販売における税務管理は、一見複雑に感じるかもしれません。しかし、基本的な知識を身につけ、日々の記録をしっかりと行うことで、適切な確定申告は十分に可能です。特に大切なのは、収入と経費の正確な記録、適切な経費計上、そして期限内の確定申告です。
わからないことがあれば、税務署や税理士に相談することをためらわないでください。確定申告は面倒な作業に思えるかもしれませんが、これをきちんと行うことで、安心して創作活動に打ち込むことができます。新しい一年の始まりに向けて、ぜひ適切な税務管理を心がけていきましょう。

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